下請けは下請けらしく、言われたことだけやってりゃいいの。 お前の意思なんて関係ないんだよ。 30年以上付き合いがある、取引先の新しい営業部長。 坂木から、俺は予想外の言葉を聞いた。 あなたね、自分が何を言っているか、分かってるんですか? 元請け、下請け関係なく、仕事はみんなで作るもんでしょ? これだから下請けは、お前らは仕事を与えられなきゃ何もできないゴミクズだろうが。 次また口応えしたら、契約解除してやるぞ。 俺の言葉は彼に届くことはないのだと悟った今、決断した。 分かりました。 では、さようなら。 この人は、何も分かっていないのだろう。 彼は、俺の会社と契約を解除したことにより、全てを失うことになる。 俺の名前は青井優人、35歳。 中小企業、青井メカニクスの代表取締役社長だ。 祖父が創業し、父が二代目として守ってきたこの会社を、3年前に引き継いだ。 高精度のネジやボルトなど、精密な機械部品を製造する会社だ。 一見地味な商売かもしれないが、これらの部品がなければ、世の中の機械は一つとして動かない。 そんな誇りを持って経営している。 工場長の山田が声をかけてきた。 社長、今日も早いですね。 朝一番に出社するのは俺の習慣だ。 ああ、新規案件の図面をもう一度確認したくてな。 さすが社長、細かいところまで目が行き届いてますね。 山田はそう言って笑った。 だが、俺自身は特別なことをしているつもりはない。品質に妥協しないのは当然のことだ。 大学時代、俺は工学の研究に没頭していた。 留学先で出会った教授との共同研究から生まれた特許技術もある。 だが、そんな経歴を普段から語ることはない。 ジムの佐藤が内線で告げる。 社長、精神コンストラクションから電話です。 精神コンストラクション、業界最大手の建設会社だ。 うちは祖父の代から30年近く、彼らの工事機材や建設中期向けの部品を納品している。 分かった、すぐ出る。 受話器を取ると、向こうは営業部の田中だった。 お世話になっております。青井メカニクスの青井です。 ああ、青井社長。 例の新規案件の件なんですが、部長が直接お話したいそうです。 来週あたり、御社へ伺えないかと。 精神の営業部長。 坂木修司。あまり評判の良くない男だ。 下請け企業を見下し、高圧的な態度で接することで有名な人物だ。 承知しました。スケジュールを確認して、また連絡します。 電話を切ると、工場長の山田が心配そうな顔で近づいてきた。 精神の坂木部長が来るんですか? ああ、新規案件の打ち合わせだろう。 あの人、無理な要求してくるんじゃないですか? 噂では、精神が新たに大規模現場向けの専用部品を大量発注する計画があるらしい。 そして、そのために更なる値下げを要求してくるという話も耳に入っていた。 値下げの話なら、できる範囲でしか対応できないさ。 会議室で経営会議を開き、精神コンストラクションからの新規案件について話し合った。 値下げ要求に応じれば、ほとんど利益が出なくなります。 でも、精神との取引が切れるのも怖いです。 俺は全員の意見を聞いた上で決意を固めた。 確かに、精神は大切な取引先だ。 だが、我々には我々の基準がある。 品質を維持するための最低ラインは支出する。 それが、先代から受け継いだ青いメカニクスの誇りだ。 その日の夕方、俺は父の古い写真を見ていた。 厳しくも誠実な父の姿を思い出す。 父なら、こんな状況でどう判断するだろうか。俺が年商3兆3000億の特許保有者だと知らない取引先の新部長「下請けが逆らうなら契約終了でw」俺「残念ですね…」➡︎速攻ライバル会社に営業した結果w
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下請けの分際で偉そうにすんな。お前は外で一生待ってろ。 大手取引先に商談に行く俺だが、商談時間になっても現れない。 連絡がついたかと思えば、この始末だ。 仮ににならん話をどうせ持ってきたんだろ、広次貴君。 その後も3時間待たされた俺は、我慢の限界を迎える。 そしてこの商談が流れた翌日、ニュースを見た社長は震え上がることになる。 俺の名前は篠原大地、35歳。 スタートアップ企業ブルースプリング社でリードエンジニアをしている。 小さなラボで長時間かけて開発した浄化装置は、ようやく実用化の目処が立った。 ウォータースキャンシステム、略してWSSと呼んでいる。 見た目は大したことない箱型の装置だが、この中には俺が人生をかけて研究してきた技術が詰まっている。 今日もラボでテストを重ねていた。 泥水のように濁った水をWSSに注ぎ込み、フィルターを通す。 数値を確認しながら微調整を繰り返す作業に没頭していると、背後から声がかかった。 篠原さん、すごいですね。この透明度、ほとんど飲料水レベルじゃないですか。 振り返ると、若手研究員が目を輝かせて装置から出てきた水を見つめていた。 確かに、入れた時と出てきた水では雲泥の差だ。 透明度が増し、有害物質の数値もほぼゼロ。 俺は満足げにうなずいた。 まだ改良の余地はあるが、基本的な機能は確立できた。 これで大規模テストに進める。 ひとしきり結果を記録し終えると、時計を見た。 もう夜の9時を回っている。他のスタッフはほとんど帰った後だ。 片付けを済ませ、ラボを出ようとすると、窓の外に映る自分の姿が目に入った。 地味なグレーのスーツに少し疲れた顔。 大学時代からずっと研究一筋で、派手なところは何一つない。 だが、この地味な外見の奥には、誰にも負けない情熱を秘めている。 きれいな水をみんなに。 俺は独り言のようにつぶやいた。 若手の研究員がそれを聞きつけて、
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偵察で地方勤めのエンジニアが本社で役に立つわけねえだろう。 人事部長佐竹が俺に向けて放った一言。 確かに、中卒の俺が大企業の本社勤務を命じられたのは奇跡のような話だろう。 俺は本社での仕事に胸を高鳴らせていたのも束の間、 俺は三百名の新入社員と研修を受けるはずが、部長の指示で研修に参加できずに雑用をこなす日々が続いていた。 そして、研修最終日。 偵察のおっさんは会社の恥。だから私の権限で彼をクビにすることを宣言します。 壇上で部長は俺をなざしして会場を凍らせた。 その場にいた全員の視線が俺に向く。 俺は周囲のざわめきを一切無視して、静かに壇上に歩み寄った。 こいつは何もわかっていない。 では、こちらをどうぞ。 俺はその場で退職届を出し、会場を後にした。 この決断が俺の人生を大きく動かし、そしてこの会社の未来をも揺るがすことになることを誰も予想していなかった。 俺の名前は青木光也。今年で52歳になるサラリーマンだ。 俺の勤める青城会社はいわゆるIT企業というやつだ。 今でこそビッグテックと呼ばれる巨大なIT企業が世界を席巻しているが、昔はそんなことはなかった。 俺がこの会社に勤めたのは30年以上前のことだ。 西暦で言えば1990年代のこと。 当時はインターネット自体も未成熟で、パソコンですら出始めの時代だ。 一般的にはオタクと呼ばれ日の目を浴びない環境で俺は努力を続けてきた。 俺が特に専門的に学習を続けてきたのは情報セキュリティの分野だ。 無法地帯だった当時の情報業界において、防御を知らない人間は片っ端からハッキングなどの攻撃を受けて潰れていった。 セキュリティソフトなるものもあったが、当時のパソコンのスペックではセキュリティソフトを入れることだけで精一杯だったため、 セキュリティソフトを導入したがためにパソコン自体が使い物にならないこともよくあった。 俺は俺の力で自分の会社を守ってみせる。 俺はセキュリティの分野において数々の功績を残してきた自負がある。 自社のセキュリティだけでなく、セキュリティの分野において自分が残してきた技術が今の日本に影響を与えている自負がある。 それもすべて一生懸命に努力を重ねてきたからだ。 寝るままを死んで勉強しアウトプットを重ねてきた。
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おい、待て。これは一体何だ? 出社した俺は、社内掲示板を見て驚きを隠せなかった。 そこには、希望退職者の張り紙があり、俺の名前が記載されていた。 中卒が会社にいると知られたら、評判が下がるから、自ら辞めてくれて助かるよ。 社長の息子である東條は俺を嫌っていて、今回の仕打ちも彼の仕業なのだろう。 彼は低学歴の人間を下に見ているようだから、教えてあげるしかないな。 東條の希望通りに退職したことで、この会社の評判はひっくり返ることになる。 俺の名前は鳩総太、27歳。中卒だが独学でプログラミングを学び、今はメトロリンクソリューションズというIT企業で働いている。 大げさじゃなく、会社の私力オンラインサービスを支えているのは俺だ。 契約上は俺個人が所有するクラウドホストで、会社のシステムを動かしている形になっている。 今日も普段通り出社してオフィスに入った瞬間、何か様子がおかしいことに気づいた。 社員たちが社内掲示板の前に集まり、ざわついている。 どうしたんだ? 近づいてみると、A4の紙が貼られていた。希望退職者と書かれている。 そして、その下に俺の名前だけが目立つように記載されていた。 はあ?思わず声が漏れる。周囲の社員たちも、どういうこと?鳩さんだけ?とざわめきが広がっていた。 まさか、と思った矢先。 お、本人来たな。中卒が自主退職?偉いじゃねえか。 嫌な声が背後から聞こえてきた。振り返ると、 当庶和鷹が腕を組んで立っていた。社長の息子で名ばかりの最高戦略責任者だ。 大卒を鼻にかけ、俺を見下すことしか能がない。 これは会社の正式な方針なんですか?聞いていませんが。 冷静さを保ちつつ、尋ねると、和鷹はさらに高圧的な態度を取った。 俺は最高戦略責任者だ。俺が決めたんだよ。問題あるか? 社内の空気が凍りついた。なぜわざわざリストに俺の名前だけ。嫌がらせか? それに、会社的にも損になるはずだが、周囲の社員たちは、 ハトリさんがいなくなったら、システムどうするの? 今のサービス、全部あの人が管理してるんでしょ?と、小声で話し合っている。 彼らには、実情がわかっているからだ。 何ブツブツ言ってるんだ。決まったことだからな。さっさと退職届け出せよ。