偵察で地方勤めのエンジニアが本社で役に立つわけねえだろう。 人事部長佐竹が俺に向けて放った一言。 確かに、中卒の俺が大企業の本社勤務を命じられたのは奇跡のような話だろう。 俺は本社での仕事に胸を高鳴らせていたのも束の間、 俺は三百名の新入社員と研修を受けるはずが、部長の指示で研修に参加できずに雑用をこなす日々が続いていた。 そして、研修最終日。 偵察のおっさんは会社の恥。だから私の権限で彼をクビにすることを宣言します。 壇上で部長は俺をなざしして会場を凍らせた。 その場にいた全員の視線が俺に向く。 俺は周囲のざわめきを一切無視して、静かに壇上に歩み寄った。 こいつは何もわかっていない。 では、こちらをどうぞ。 俺はその場で退職届を出し、会場を後にした。 この決断が俺の人生を大きく動かし、そしてこの会社の未来をも揺るがすことになることを誰も予想していなかった。 俺の名前は青木光也。今年で52歳になるサラリーマンだ。 俺の勤める青城会社はいわゆるIT企業というやつだ。 今でこそビッグテックと呼ばれる巨大なIT企業が世界を席巻しているが、昔はそんなことはなかった。 俺がこの会社に勤めたのは30年以上前のことだ。 西暦で言えば1990年代のこと。 当時はインターネット自体も未成熟で、パソコンですら出始めの時代だ。 一般的にはオタクと呼ばれ日の目を浴びない環境で俺は努力を続けてきた。 俺が特に専門的に学習を続けてきたのは情報セキュリティの分野だ。 無法地帯だった当時の情報業界において、防御を知らない人間は片っ端からハッキングなどの攻撃を受けて潰れていった。 セキュリティソフトなるものもあったが、当時のパソコンのスペックではセキュリティソフトを入れることだけで精一杯だったため、 セキュリティソフトを導入したがためにパソコン自体が使い物にならないこともよくあった。 俺は俺の力で自分の会社を守ってみせる。 俺はセキュリティの分野において数々の功績を残してきた自負がある。 自社のセキュリティだけでなく、セキュリティの分野において自分が残してきた技術が今の日本に影響を与えている自負がある。 それもすべて一生懸命に努力を重ねてきたからだ。 寝るままを死んで勉強しアウトプットを重ねてきた。 プログラミングの技術は一丁一石で身につけられるものではない。 どれだけ勉強し、どれだけ修正を行ってきたか、それが重要だ。 俺は自分の能力に自信を持っている。 それと同時に自分の才能の無さも理解している。 才能のない俺が他を圧倒するだけの力量を身につけたのは努力の量だと思っている。 俺は誰にも負けない努力をしてきた。 だからこそ俺が本社に営店するのも当然だと感じていた。 俺は誰よりも努力をした。 だから俺が本社に勤務することになるのも当然のことだ。 だが死者の人間たちは俺が営店したことでいい顔をしなかった。 嫉妬か? 自分の努力不足を棚にあげていいものだな。 俺が本社勤務になることが面白くなかったのだろう。 みんな口々に、 やめておいた方がいい。 ソフトの制作はいいけど本社では人を使う仕事だろう。 青気に向かないんじゃないか? など俺への文句ばかり言っていた。 俺は誰よりも努力してきた自負がある。 そのことに対して努力を怠ったあいつらに文句を言われたくはない。 努力すれば必ず目標は達成できる。 努力もしない奴らが口を出すな。 俺は独り言のように言って死者を後にした。俺が会社のシステムを開発した技術者だと知らず、300人の前で罵倒する部長「今日限りで中卒の無能はクビw」俺「本当にいいんだな?」部長「当然w」➡︎翌日、衝撃の展開にw
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「また家族を言い訳に仕事をさぼるのか。もう、お前はあしたから来なくていいぞ。」 上司の堂島に相対の申し出をすると、彼はなぎくわぬ顔で、そう言い放った。 「空気みたいな男だしな。いてもいなくても、会社に影響はないんだよ。」 堂島から見たら、「俺はただの雑用係りなのだろう。そっちがその気なら。」 「わかりました。では、こちらを。」 俺は退職届を渡して、この会社を後にした。 最後までにやついていた堂島だったが、彼は俺を手放してしまったことで、 まさか自分の首を絞めることになるとは思いもしなかっただろう。 俺の名前は青柳拓真。総務部に所属して三年目の社員だ。 肩書は総務部一般職だが、実際のところは雑用係りと呼んだほうが正確かもしれない。 少なくとも、うちの部長堂島はそう思っているようだ。 「青柳、コピー機のトナーが切れたぞ。さっさと交換しろ。」 部長の堂島誠。 四十代半ばで口が悪く、俺に仕事を押し付けるのが日課になっている男だ。 「はい、すぐやります。」 「それと、午後の会議資料、五十部コピーしておけ。あと、議事録も頼む。」 了解しました。会議にも呼ばれないのに議事録だけ頼まれる。いつものことだ。 廊下に向かって歩き始めた俺の背中に、部長の声が追いかけてくる。 「まったく、お前に大事な仕事は任せられないからな。」 そんな言葉にも慣れた。別に気にしてないし、実際のところ、俺は裏で結構重要な仕事をしている。 会社のシステムトラブルを未然に防いだり、他の社員が作った書類のミスを密かに修正したり。 でもそれを言うつもりはない。俺は静かに廊下を歩きながらスマホを取り出した。 昨日、総務部のサーバーにエラーが出ていたから、早めに修正しておこう。 また古いファイルのパーミッションが変わってるな。こういうの、誰も気づかないんだよな。 コピー用のトナーを取りに行く途中、同期の坂口とすれ違った。 「よう、青柳。今日も雑魚か? 楽でいいな。」 「ああ、まあね。」 坂口博。 入社は同期だが、道島に取り入って出世街道をひた走っている。何かあると。
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事故で入院。じゃあ、クビにしとくから、一生休んどけよ。 俺が部長に電話して状況を伝えると、彼は心配するどころか、バカ笑いしていた。 いやぁ、窓際社員はこの会社に必要ないからね。もう明日から来なくていいぞ。 わかりました。 彼にとって俺は捨て駒の一人なのだろう。 俺は部長の言葉を受け入れ退職へ。 この一件を機に、彼は自分の立場を追われることになるとは、まだ知るよしもなかった。 俺の名前は佐々木健二、32歳。大学を卒業して上京。 狸株式会社に入社してから、今年でちょうど10年になる。 今は総務部に所属しているが、地味な見た目のせいか、周囲からは使えない男とみなされ、任される仕事は誰にでもできるような雑務ばかりだ。 この資料、倉庫に運んでおいてくれ。 そう言ってきたのは、霞津義、48歳。名門大学の出身でプライドが高い。 はい、わかりました。 俺は言われた通りに資料を抱え、倉庫へと運ぶ。 そんな俺の背後からは、霞部長の声が聞こえてきた。 いい歳して雑用しかできないなんて、佐々木は総務部の鬼物だ。 その言葉に森川がすかさず応じる。 本当ですね、佐々木さんって、いてもいなくても同じって感じ。 森川綾乃、24歳。肩までカールした髪が印象的な美人。上司に取り入るのが得意だった。 そんな二人の横で別の社員が言った。 でも佐々木さんって、誰よりも早く出社していますよね。 その一言に森川は首をかしげる。 確かに、そんなに早く来て、何してるんだろう。 霞部長は顔をしかめ、不機嫌そうに吐き捨てた。 使えない奴はどんなに早く来たところで、結局は役に立たんよ。 倉庫に着いた俺は資料を脇に置き、思いその扉を開けた。 中は案の定、散らかり放題。年度始めはいつもこうだ。 床には段ボールや書類が無造作に置かれ、足の踏み場もない。 俺は深く息を吐いて周囲を見回し、抱えていた資料を決められた棚へ静かに置いた。 その日の夕方、営業部の斎藤がやってきた。
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俺の名前は朝野誠、35歳。中卒の工場勤務だ。花々しい経歴なんてない。高校にも行けなかった。 親父が病気で倒れて家計を支えるために、15歳の時から働き始めた。 でも、独学には誇りがある。機械いじりが好きで、 よなよな古い部品を集めては組み立てて、自分だけの発明品を作ってきた。 工場の片隅に設けられた自分の作業台の前に立ち、新しいジグの設計図に向かう。 修理工業の工場内は朝から機械音で活気に満ちていた。 朝野、この部品どうなってる? 部長が声をかけてくる。俺の直属の上司だ。 いつも眉間にシュワを寄せているが、目は優しい男だ。 はい。 この継手部分を改良して、耐久性を30%ほど向上させました。 図面通りに進めています。俺は自信を持って答えた。 大学や専門学校で正式に学んだわけじゃない。 すべて独学と経験だ。 でもその知識は本物だと自負している。 おお、またお前の独自改良か。 相変わらず頭の回転が早いな。 そう言って部長は肩を叩いていった。 この会社に入って8年。今では主任候補として認められている。 最初は中卒という肩書きに不安もあったが、結果を出し続けることで周囲の信頼を勝ち取ってきた自負がある。 家に帰ると妻の彩香が戦い笑顔で迎えてくれた。 彩香は俺より3つ年下の32歳。 おかえり、まこと。今日も遅かったね。 ああ、新しい部品の試作に時間がかかってな。 また何か発明してるの? その言葉に少し照れながらうなずく。 彩香は俺の発明熱を一番理解してくれる人だ。 ああ、製造ラインの効率化も考えててな。 もしうまくいけば作業時間が2割は短縮できる。 すごいじゃない。あなたの頭の中はいつも新しいアイディアでいっぱいね。